Noteの記事を転載しています。季節感がズレてますが、お気になさらず。
〜ハンドルのセッティングについて〜 みなさん、こんにちは。パーソナルサイクリングトレーナーの勇大です。このところ、山々が綺麗な紅葉を見せていてライドも楽しいものになってきましたね。さて、唐突なのですが、
「自分の技術を過信していませんか?」
と質問されるとあなたはどう答えますか??次のようなシーンを想像してみてください。
〜突然目の前に動物が飛び出してきて危険を回避しなければならない。止まるか、避けるしか手はない〜
実は、自転車で走りながら自分自身の器(レベル)を超えてしまった時、バイクはいとも簡単にライダーが操作できなくなるほど別の乗り物に変わります。あなたも一度や二度そのような経験をして冷や汗をかいた記憶があるのではないでしょうか?
ライダーは常にバイクをコントロールしている必要があり、バイクはライダーの器(レベル)を超えさせてはいけないのです。フィッターである私は、
ライダーが安全に自転車を楽しみ、無事に家に戻れるかがフィッティングの仕事だという事を常に念頭に置いてポジションを提案しています。
yudai
実際のところ安全なポジションについての提案や、ディスカッションをできる機会はフィットの時しかありません。
安全が担保されたポジションの上で、ライダーのみなさんの悩みや目的達成に沿いながら、ライダー自身が理解し納得し満足してもらえるポジションに変えていくことが大切だと考えています。
前回、サドルの説明をしましたが、そのプロセスを通じて、安定して座れるようにポジションを設定したら次はハンドルのポジションに移ります。
次から列挙するポイントを書いておきたいと思います。フィッティングの日常でライダーとディスカッションしている内容ですので、具体的なポイントとなります。
①腕の伸ばし方について
「前ならえ」をするような腕の伸ばし方でグリップに手を伸ばします。または、ダンベルカールをするようなフォームで、腕を伸ばし手首のみ内側に90度立てることで腕、肘、肩周りのフォームが自然に作ります。コップをテーブルに置き、持ち上げる動きです。
②グリップの握り方について
シマノ のブラケットは前方に細くくびれている部分があり、中指か人差し指を射的のトリガーを握るようにブラケットに引っ掛け、フードのゴムの上に手の小指球側をのせます。
鏡などで確認ができるので、手首、腕、肩が一直線になっている状態が自然です。
ここでハンドルバーの幅を見直し交換を行なって行きます。ただ、広背筋が発達している場合は、状況に応じて幅の広いバーが快適かもしれません。
④ステムの長さについて
ライディングのフォームを考えた時、ヘッドを中心としたピポッド動作がしやすいです。写真の通りにニュートラルなフォームを取ったときにフロントフォークの延長線上に顎が位置し、普段走る速度域でもハンドリングの安定感がある事。
ライダーが常用する速度域が30km/h以上の場合は90〜100ミリの長さを選ぶと、ハンドリングの安定感が高まります。その逆で、ステムの長さが60ミリなど短くなるとハンドリングがピーキーになってきます。
写真のライダーは十分に柔軟性がありますが、上半身や下半身の柔軟性やコーナーリングのスキルに応じてライダーの感じ方の違いがあります。
今まで説明してきた①〜②の一連の腕の伸ばし方、グリップの方法が行える条件の上でポジションを比べます。
多くのライダーはグリップを緩ませて握る(手前を握る)ため、その時はステムの長さが長いという事になります。
ハンドルやグリップから手を離したり、緩ませたりすることは危険であるといえます。フレームのサイズを見直す場合もあるのが、ステムの長さを検討する時なのです。
⑤ステムの角度について
0°、−6°、−12°、−17°の角度バリエーションがあります。−6度がロードバイクの完成車によく使われる角度でバランスが良く使いやすいものになっています。-12°の選択例ではクリテリウムなどの高い速度域(50km/h前後)のコーナーリングの安定を考慮するときに選択します。TTバイクのようにハンドリングを重くして、直進性を考慮すると-17°が標準的な選び方です。
ステムの角度をキツく(-17°)すると、バイクをバンクさせる事が重くなり、ライダーの腕力を使うことになります。ライダーはバイクを適正な角度にバンクさせる必要があります。スピードを出したいが故に無理にステムを伸ばしたり、角度をキツくしてバイクの安定感を作ってしまうと、カーブでは簡単にライダーの器を超えてしまうということになります。
フィッティングの現場では、ステム長さが130ミリや120ミリのバイクもよく見られますが、ハンドリングが重くなるためロングライド主体のライダーでは、バイクの操作を難しくしている場合が少なくありません。走る目的やレベルに合わせたステムの仕様を選ぶ事で、安全なバイクコントロールを楽しくことができるのではないでしょうか。
なにはともあれフィッティングのポジションに込める想いとしては、ライダーが思う存分走り回れ、自宅に戻る最後の角を曲がるまでポジションが仕事をしてくれることです。そして、フィッティングで作るポジションでライダーの姿勢を補助し、サドルの上で過ごす時間を「安全」で「快適」になるように、そっとサポートできるような提案を込めています。