2024年4月13日、アイアンマン台湾に出場し、14時間1分で完走しました。

10年ぶりのトライアスロン復帰戦。12月から準備を始め、まったくゼロの状態から、どうにか本番まで漕ぎ着けた5ヶ月間でした。振り返ると、ただ走るだけではなく、「スタートに立つまで」の道のりこそが、すでにひとつの大きなチャレンジでした。


■ 準備とサポート

今回は、自分ひとりではどうにもならない場面が多くありました。トレーニング計画はもちろん、バイクの整備やポジション調整、旅の準備、食事や補給計画など、やることは山積み。そんな中、理学療法士であり、フィッティングの現場でも一緒に仕事をしている小田嶋裕之さんが、準備段階から現地サポートまで本当に力になってくれました。

心から信頼できる相棒がいたからこそ、レース当日も安心して臨むことができました。もしソロでこの旅に出ていたら、きっと何かしらトラブルで会場にすらたどり着けなかったと思います。


■ レース当日:天候と戦略

大会当日は、あいにくの荒天。予報通りの強風と波。スイムは当初予定されていた2周から、安全を考慮して急遽1周に短縮。潮の流れもきつく、視界も悪い中での海泳ぎは本当に過酷で、これ以上続けていたら途中棄権もありえた状況でした。「生きて砂浜に戻れた」ことが、まず第一関門突破です。

バイクは180km。風速9mという強風の中、コースも一部変更が入り、エアロポジションで走るには非常に厳しい条件でした。高速巡航は難しいと判断し、今回は“完走”を最優先に、無理のないペースと転倒しないマネジメントを徹底。レース後半のフルマラソンに向けて、補給に集中しました。バイクには計2800kcal分の補給食を積み、トラブルなく完食。地味なようで、ここが今回のレース成功の鍵でした。


■ フルマラソン

トランジションでは、とにかく「体を守る」ことを意識。足裏の豆防止に保湿クリーム、脚つり防止にマグネシウムスプレー、そして露出部分には日焼け止め。ここまでくると、ただの体力勝負ではなく「セルフマネジメントの勝負」です。

マラソンは、膝の不安がある中での“ぶっつけ本番”。2月にハーフマラソンを一度走ったものの、膝の痛みでしばらく走れず、不安を抱えたままのスタートでした。最初の5kmは様子を見ながら慎重に走り、その後はコンディションが安定し、無心で淡々と距離を積み上げていきました。

30km手前から、胃腸の不調とエネルギー切れの兆候が出てきて、塩分不足を痛感。すぐに補給内容を修正し、最後の10kmはアミノ酸を摂りながら、未知の領域へ。歩きを挟みつつも、止まらず前に進み、ゴールまでたどり着けたことは本当に大きな自信になりました。


■ ゴール後の心境

無事にゴールした瞬間、泣いたり叫んだりするような“感情の爆発”はありませんでした。でも、体を壊さず、冷静にゴールできたことが何よりの喜び。走りながら「この状態でゴールまで行ける」と確信できたことも、初めての経験でした。

トライアスロン=気合と根性というイメージが強い中で、今回は終始マネジメント重視。だからこそ、達成感と同時に「次はもっと上を目指せる」と感じられる終わり方になりました。


■ レース以外の楽しみ

宿泊先はレース会場から徒歩5分のローカルホテル。現地の雰囲気を味わえる場所で、レース後も地元の食堂で食事をしたり、市場を散策したりと、旅の魅力もたっぷり味わいました。

さらに、日本人選手との食事の時間、海外からの参加者との交流もあり、トライアスロンという競技を超えた「人との出会い」にも心が動かされました。台湾という土地の優しさと温かさを、改めて感じた時間でした。


これから、今回の経験をもとに、準備やトレーニングでうまくいったこと・失敗したことなどを整理し、これからアイアンマンに挑む人の参考になる情報を発信していきたいと思います。

改めて、応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。

渡邉勇大、無事にアイアンマンになることができました!