これまでの試行錯誤の裏側にあるもの
さて、今回は心で回すペダリングの3回目、ということもあってちょっと具体的なテーマについて書いていきたいと思います。テーマは「サイズ選び」です。自転車販売店での最も重要なお仕事の一つは「サイズ選び」です。簡単に見えて実は奥の深いサイズ選び。
このnoteを読んで頂いている方々はサイズ選びを当然のこととして理解していただいていると思いますが、世の中にはそもそもサイズがあることさえ知らない方もいらっしゃるくらいあまり知られていないのも事実です。しかも、昔から(今現在でも!)バイクサイズを選ぶ時は、業界標準はないのです。各メーカーが独自に出している、サイズチャートを利用してベターなサイズを選んでいるというのが、きっとどこの自転車屋さんでも日常の光景だと思います。
このサイズ乗れますか?
と、ライダー(お客様)とのやり取りを店頭ではよく耳にします。実はこの時、『乗れないですねぇ』と言うセールスマンはいないはずです。たいてい『乗れますよ』または『こちらのサイズが合うかもしれません…』と返ってくると思います。ある意味“テキトー”なやり取りで自転車のサイズが決まっていくのです。ライダーの方々は、あまり納得いく感じもなく、最終的にバイクを買うステップに進んでいってしまうことが実に多いのです。
自分も同じような事をしてこなかったか?と言われると嘘になります。当時はそのサイズで間違いのないという理由や根拠が説明できなかったし、ライダーから理由を求められることもありませんでした。けれど、高価なバイクを販売しておきながら、サイズに関してはさも他人事の様にやり過ごしてきたところもあります。これは大きな悩みでもあったし、試行錯誤を繰り返したところでもあります。
今だからこそ本当のサイズ選びを提供できる
実際のところ、フィッティングのサービスマンになるまでは、メンタルとしては苦しかったです。今だから言えますが、その昔は新車の納車のタイミングが本当に苦痛でした。感覚や経験をもとにしながらあらゆる状況を想定しながら自転車を選び販売したものの、サイズ選びに失敗をすると全てを否定される仕事だったからです。
もともと私は設計の仕事をしていたので、“選ぶ”、“決める”、“変える”ということに関して根拠の説明を当たり前のように行う世界にいました。一方で自転車販売という仕事は真逆で、ファジーすぎる世界だったのです。そんなファジーさにストレスを抱えていた、というのは言い過ぎではない気がします。
吊るし(完成車そのままの状態)のバイクを組み立てて納車し、サイズが違っていた時は、いつでもキャンセルを受け付ける覚悟をしていたくらいです。しかし、今は、(やや上から目線で反感を買うかもしれませんが)
ライダーが安心して選べるお手伝いをするのが私たちのミッション!
と言い切ることができます。今となれば、僕の価値観の中では、僕から自転車を買い、自転車に乗れば時間の価値をより高められます!と言い切れます。ちょっと熱苦しい気持ちに聞こえるかもしれませんが、これが、私のモチベーションになっているのです。
自分で自分のバイクを選んで欲しい
パソコン、保険、車など一度購入したら数年に渡り使い生活を豊かにしてくれるような比較的高価なお買い物をする時に、販売員は商品をお客様が理解しやすいように整理します。お客様が頭の中で比較しやすいように望む優先順位をつけて項目をまとめ、お客様自身が自分で商品を買う選択をしやすくするお手伝いをします。
これは自転車選びも同じなのです。僕はそのお助けしたいと思っています。自転車は命を預ける相棒です。自分で選んでこそ愛着が湧く。その愛着が本当に大切なのです。なぜなら、ライドの最中はバイクとライダーだけの世界なのですから。